2023.12.29
movies
今年も中テレをご覧いただき、有難う御座いました。きょうは銀行の前に結構な人が並んでいました。年末年始何かと入り用ですものね…というか、私の使っている銀行はきょうが扱い最終日なのね。私も行かねば…。
さて先日の本に続き、今度は最近見てきた映画の話を。
『ゴジラ-1.0』
私はこの歳で恥ずかしながらオリジナルの『ゴジラ』(1954年)を観た事が無い。唯一観ているゴジラは『シン・ゴジラ』(2016年)。東日本大震災を経験し、また個よりも組織の力で困難を乗り越えてきた日本だからこそ生まれたような作品だった。今回は舞台が戦後まもなく、しかも国も(解体後の)軍隊も(米ソの緊張が高まる中)アメリカも頼れない状況の中対峙せねばならないところが、令和の日本だから生まれた作品になっていると思う(←なぜこれが“今”なのかよく分からない方は、パンフレットを読むと納得がいくと思う。“国産”ゴジラが振り返れたり、VFXで映像化されるまでが分かったり、監督の構想過程が知れたり、映画の世界観が膨らむ一冊)。
山崎貴監督なだけに、映画もストーリーもよく作りこまれている。まぁ所々「なぜそこにあなたが?」とか「ゴジラに踏まれたんじゃなかったっけ?」という部分も細かく言えば無くはないのだが、そんな些末な部分はどうでもよくなる程、全体の仕上がりが素晴らしく思えた。主役の二人が朝ドラとこんなに違う演技をするのね、と役者の技量に感嘆したり、『永遠の0』を撮った山崎監督なだけあって飛行シーンが素晴らしいのと同時に、田畑を見下ろした時に心に湧く故郷や大切な人への愛がほんの数秒で表現されていたり、命や人の存在が粗末に扱われていた大戦時の政治・軍事体制への批判的視点があったりと、見どころも多く見応えたっぷり。怪獣映画というよりヒューマンドラマ。ゴジラを知らない私でも十二分に楽しめた。大きなスクリーンで観たい快作。
『PERFECT DAYS』
これは観る人それぞれに色々な解釈が出来る映画。私は「満ち足りる事を知る、満ち足りる事はその人次第」、つまり心の幸福はその人が決める事、というメッセージだと受け止めた。つまりこの映画は、主人公平山は幸福な人である、その幸福な平山をドキュメンタリー風に追っているところが素晴らしく、そして味わい深いのだ(そして役所広司さんは、改めて凄い俳優さんだ)。
私が大学の卒論の題材に選んだソーントン・ワイルダーの作品『わが町』という芝居も、日常の些細な出来事、何て事の無い繰り返しを“出来る”事が如何に幸せな事かを、死者の目から、絶対に出来ない「タイムマシーンに乗ったように過去に戻って再現」する事で描いた作品だが、それに共通するものがあるように感じた(日常の大切さや幸福は、東日本大震災を経験した県民は痛感した事ではあると思う)。
ただ如何せん、平山が車に乗った時にその日の気分で聞く音楽の歌詞が分からない。画面を大切にする為か、和訳は出ない。これ、歌詞が分かったらもっと面白いだろうにな…と思ったりもした(とはいえ訳詞は訳詞であって、やはりその曲のその言語の詞が全てなのでしょうが)。
パンフレットはこの“幸福ドキュメンタリー映画”が出来る過程を覗き見でき、また様々な解釈の一端を知る事で映画の深みを実感できる。
『首』
北野武監督の最新作。本能寺の変が起こるまでの裏に、こんな心の動きが絡んでいたのでは?という北野氏の発想から出来上がった映画で、構想は既に30年前に出来ていたとか。その着想の面白さが北野監督の独自性だし、人の醜さを含む業を描いている点が落語にも通じる日本の作品らしさを感じた。30年前の北野武監督だったらまた違うエネルギッシュな作品になっただろうな、と想像も膨らむ。
ただ首が落ちたり取れたり飛んだりするので、R15+指定(結構生々しいです)。そして方言から伝わる地方色は、日本人でないと分からないだろうなぁ…と思ったりして。
どの作品も県内の映画館で見られる作品です。あ、映画も良いですが、中テレも見てくださいませ。私は大みそか、尚志高校サッカー部の試合を、今年最後の“ドキュメンタリー”の見納めとしたいと思います。
皆さま、良いお年を。
さて先日の本に続き、今度は最近見てきた映画の話を。
『ゴジラ-1.0』
私はこの歳で恥ずかしながらオリジナルの『ゴジラ』(1954年)を観た事が無い。唯一観ているゴジラは『シン・ゴジラ』(2016年)。東日本大震災を経験し、また個よりも組織の力で困難を乗り越えてきた日本だからこそ生まれたような作品だった。今回は舞台が戦後まもなく、しかも国も(解体後の)軍隊も(米ソの緊張が高まる中)アメリカも頼れない状況の中対峙せねばならないところが、令和の日本だから生まれた作品になっていると思う(←なぜこれが“今”なのかよく分からない方は、パンフレットを読むと納得がいくと思う。“国産”ゴジラが振り返れたり、VFXで映像化されるまでが分かったり、監督の構想過程が知れたり、映画の世界観が膨らむ一冊)。
山崎貴監督なだけに、映画もストーリーもよく作りこまれている。まぁ所々「なぜそこにあなたが?」とか「ゴジラに踏まれたんじゃなかったっけ?」という部分も細かく言えば無くはないのだが、そんな些末な部分はどうでもよくなる程、全体の仕上がりが素晴らしく思えた。主役の二人が朝ドラとこんなに違う演技をするのね、と役者の技量に感嘆したり、『永遠の0』を撮った山崎監督なだけあって飛行シーンが素晴らしいのと同時に、田畑を見下ろした時に心に湧く故郷や大切な人への愛がほんの数秒で表現されていたり、命や人の存在が粗末に扱われていた大戦時の政治・軍事体制への批判的視点があったりと、見どころも多く見応えたっぷり。怪獣映画というよりヒューマンドラマ。ゴジラを知らない私でも十二分に楽しめた。大きなスクリーンで観たい快作。
『PERFECT DAYS』
これは観る人それぞれに色々な解釈が出来る映画。私は「満ち足りる事を知る、満ち足りる事はその人次第」、つまり心の幸福はその人が決める事、というメッセージだと受け止めた。つまりこの映画は、主人公平山は幸福な人である、その幸福な平山をドキュメンタリー風に追っているところが素晴らしく、そして味わい深いのだ(そして役所広司さんは、改めて凄い俳優さんだ)。
私が大学の卒論の題材に選んだソーントン・ワイルダーの作品『わが町』という芝居も、日常の些細な出来事、何て事の無い繰り返しを“出来る”事が如何に幸せな事かを、死者の目から、絶対に出来ない「タイムマシーンに乗ったように過去に戻って再現」する事で描いた作品だが、それに共通するものがあるように感じた(日常の大切さや幸福は、東日本大震災を経験した県民は痛感した事ではあると思う)。
ただ如何せん、平山が車に乗った時にその日の気分で聞く音楽の歌詞が分からない。画面を大切にする為か、和訳は出ない。これ、歌詞が分かったらもっと面白いだろうにな…と思ったりもした(とはいえ訳詞は訳詞であって、やはりその曲のその言語の詞が全てなのでしょうが)。
パンフレットはこの“幸福ドキュメンタリー映画”が出来る過程を覗き見でき、また様々な解釈の一端を知る事で映画の深みを実感できる。
『首』
北野武監督の最新作。本能寺の変が起こるまでの裏に、こんな心の動きが絡んでいたのでは?という北野氏の発想から出来上がった映画で、構想は既に30年前に出来ていたとか。その着想の面白さが北野監督の独自性だし、人の醜さを含む業を描いている点が落語にも通じる日本の作品らしさを感じた。30年前の北野武監督だったらまた違うエネルギッシュな作品になっただろうな、と想像も膨らむ。
ただ首が落ちたり取れたり飛んだりするので、R15+指定(結構生々しいです)。そして方言から伝わる地方色は、日本人でないと分からないだろうなぁ…と思ったりして。
どの作品も県内の映画館で見られる作品です。あ、映画も良いですが、中テレも見てくださいませ。私は大みそか、尚志高校サッカー部の試合を、今年最後の“ドキュメンタリー”の見納めとしたいと思います。
皆さま、良いお年を。
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